#14 あやらなわなあ
気づけば近所の並木道も葉桜の緑に塗り変わっていて、ええ、暑かったり寒かったりで敵わぬ疼き、卯月も後半にさしかかり本日20日水曜日、これがmaco maretsの新曲『I wanna (feat. A.G.O)』のリリース日なのだった。例によって、この曲についてなにかメモを残すってなことでどうか。どうかしらん。
楽曲の配信先まとめはこちら→https://linkco.re/dfsv0geV
ここでは読者の皆さんが(さっそく)『I wanna』を聴いてくだすった前提でお話しするとして、まずもって際立つ特徴はやはりA.G.O氏のプロデュースによるきらびやかなトラックやろか。2020年の『Waterslide III』に収録した「Waves (feat. A.G.O)」ぶりに制作を依頼しご一緒したわけだけれども、なんというか、氏のサウンドは普段のmaco maretsがあまり選ばぬ種類のポジティヴネスを孕んでいる点で特別なんである。明るくて、グルーヴィ。ビートに静/動の両極があるとすれば、A.G.O氏の手によるそれは完全に「動」側だ!
でもって正反対の場所でくだ巻くわたし maco marets がラップをのせるとなると、すっかり枯渇した己がダイナミクスを引きずり出してやる必要があるわけで……今回の『I wanna』においても(あくまで当"者"比であるけども)平時より明るめの声色、かつリズミカルなボーカルづくりを意識した、つもり、である。
それは、あえて他者(この場合はA.G.O氏)のノリに乗っかる、裏っ返せば「乗っ取られる」ようなプロセスだったとも言える。制作の過程で、『I wanna』曲中で直接言及した「バラバラ 引き裂かれている myself」の感覚(それはこのブログで何度となく書いてきた内容でもある)をあらためて認識することになったし、むしろ、その感覚なしには歌い切ることのできない曲であったように思う。
じっさいこのラップを聴きなおすと自分でも多少の違和感がなくもない、とも言えなくもない、もごもご、という感じなのやけど、全体を通して「唯一の自己」なぞという信仰を捨てる、疑うという態度を取ることが目的であった本楽曲においてはその違和感をもをそのままに認めたいのだ。
A.G.O氏に制作を依頼した理由だって、わずかでもこれまでと別様の maco marets を表したいがためだった。半年以上にわたる今回の連続配信企画において、いかにマンネリズムに陥らずリスナーの耳をエンターテインし続けられるか、とそれは無視できない眼目で、おのれが抱え続けてきた「統一された楽曲のトーン」(これは先述の「唯一の自己」と同じ意味)への妄執を引き剥がす意味でも、積極的に殻を破っていくような、それもまた「態度する」レベルの話ではあるけれどもとにかく、制作においての実践しか手段がなかったのである。
つまり、ブレてぼやけた像のなか、違和感に濡れてそれでも「わたしならぬわたしを発見すること」を目指すような制作であることこそが重要だったわけ……。うん?
だいたいコラボレーション、共作の面白みとは他ならぬ「わたしならぬわたし」との出会いにあるのではないのんか。 先ほど「殻を破る」なんて平ぺったい表現を使ったけれどもまさに、硬直した自己認識を砕きふみこえ、どこまでもその像を拡散させてしまうような、乱反射のなかに進んで身を置く享楽も存在するんじゃなかろうか。
だから、わたしが偉そうに言うことでもないがやはりか「アイやらないわな」(『I wanna』サビのフレーズ)とそう思うのだし、畢竟『I wanna』においてメッセージたるのはその一点のみかも知れぬ! ここでの「アイ」は「唯一の」「明確な」「厳密な」エトセトラエトセトラ、対象をがんじがらめに縛り固定せしめんとする圧力をあたまにおかれた「I(=わたし)」であり同時に、今回具体的に言及できなかったけれども「愛」をもダブらせ指し示したつもりだ(そのあたり曲中で両者のニュアンスがすこし混線してしまったきらいもあるが、押し通した)。
ばらばらでままならない「アイ」も、抱きしめたり蹴飛ばしたり、適当にラフな認識のうちで相手取ることができたらいい。その実践は必ずしもイージーとは言い切れないけれど、まずは「あやらなわなあ、あやらなわなあ」と呪文のように繰り返してみる、とそんなケッタイな場所からスタートしたのがこの曲なんである。
……などなど。念仏めいた自己解説はここらで切り上げたい。なぜってこれがどのように聴かれるかといえば一切がわたしでなくあなたに委ねられているわけで、そりゃね、気に入ってもらえたら嬉しいがどうやろか。感想はどこかでこっそり、きかせてください。
おしらせ
・連続配信シングル第5弾『I wanna (feat. A.G.O)』好評配信中
配信先はこちら→https://linkco.re/dfsv0geV
・Mime One-Man Live 2022 ゲスト出演決定
2022年4月29日(金・祝)、東京・渋谷WWWにて開催されるMimeのワンマンライブにゲストボーカルとして出演いたします。
詳細は下記サイトをご覧ください。
https://eplus.jp/sf/detail/3509190001?P6=001&P1=0402&P59=1
・街なか音楽祭『結いのおと』出演決定
2022年5月7日(土)、茨城県結城市にて開催される都市型音楽フェス『結いのおと』に出演します。
(現在発表済みの出演アーティスト)
SPECIAL OTHERS ACOUSTIC/スカート/yonawo/サニーデイ・サービス/TENDRE /ぷにぷに電機/思い出野郎Aチーム/GOMA meets U-zhaan/VivaOla /YonYon /C.O.S.A./Nenashi/bird/空音/ぜったくん/maco marets/macico /栞寧 ...and more!!
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