【B.N.23】放浪中大東京砂漠(ft.『Room203』)(Sandwiches / 2020.5.1)
(この記事は2020年5月1日に投稿した内容をそのまま再掲したものです)
皐月の朝です。昨日おしらせした通り、更新時間をお昼12時に。そして、隔日でこれまでの maco marets 楽曲を紹介することにいたします。
ただし楽曲を紹介といっても、歌詞にひそませた小ネタなどは先日発売したスペシャルマガジン「TREEZ MAG.」に詳しいためあまり触れません。また楽曲制作の舞台裏については、アルバム3作のトータルプロデューサー・アズマリキ(Small Circle of Friends / Studio 75)さんが同じnote上で書いてくださっているので、ぜひそちらを読んでいただけたらうれしいです。
https://note.com/scof75/n/n05bf0ffbd54b
ではではなにを書くんやい、と思われますでしょうが、 ここでは楽曲を下敷きにして連想されることがら、直接関係ない顔をしていても、どこかでフィーリングを共にしているそれらについて書き散らしたい。つまり、これまで3週間つづってきた雑文とそこまで変わらぬかたちで、ただ己の楽曲を中心におはなしをはじめると、そんなところであります。
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前置きが長くなりました。記念すべき第一回は、示し合わせたように20と3回目にして『Room 203』。デビュー・アルバム「Orang.Pendek」の一曲目をかざるタイトルです(ちなみにYouTubeではちょっとした手違いで、曲名が正しく表示されていません。そっけなく『room』となっていますが『Room 203』が正しい)。
アルバムリリースは2016年の6月なのだけど、アズマさんのnoteにもある通りで制作をはじめたのはその半年以上前のこと。2015年の秋ごろでした。当時はまだ上京して2,3年たったくらいで、まあ今も変わらずといえば変わらずながら東京への恐れめいた感情が根深くあったもんやから、この「Room203」……当時住んでいたアパートの203号室だけが、唯一のシェルターといいますか、本丸といいますか、とにかく安寧の象徴たるこころの拠り所だったのです。
曲を書くのは必ずといっていいほどその狭い部屋の中で、つまりは一切のmoodもその空気に依拠しておる。そうした意味では、アルバム一枚ぶんの物語をつむぎだすオープニングカットは必然的にこの203号室でなければならなかったのでしょう。
実際、この曲で描かれる「部屋」、それから「朝」のモチーフはその後の作品でも繰り返しくりかえし歌われていて、それは半分自覚的なものでもありつつ、もう半分は(きわめて単純な)場所による磁力、強制力によるものだったという気がいたします。
いつの間にか声をはらないささやくような歌い方が板についてきたわたしですが、それだって隣人への騒音トラブルを避けた結果でないとは100%言い切れぬ。きっと、東京のこの狭い部屋で作られるrapと、福岡のだだっぴろい実家(先日書いたようにまったくお隣さんを気にする必要のない場所にあります)にあって作られるrapはまったく性格を異にするはずで、なにが言いたいかといえば、いまのmaco maretsの音楽的性格は、この東京での暮らしそのものによって形作られたものだろうということです。
ここで上に書いた「東京への恐れめいた感情」をときほぐしてみようとしたのだけど、なかなかうまくいきません。ただ高校生のころ九州の片隅で夢想した「東京」はたとえばMURO氏のMVで覗き見るものだったり、あるいは飛躍して漫画作品『TOKYO TRIBE』で描かれたチーマーたちの群雄割拠する世界だったり、まあ実際に住むようになってからの印象とはまた異なっていて……そりゃ当然なのですが、どちらにせよサイズの合わぬ洋服をむりくり着続けているような違和感が拭えないまま、気づけば7年が経っていました。203号室を後にして新居に移ったいまも、(あまりに茫漠としておるけれど)東京ってなんなのだろう? なぜ自分は東京にいるのだろうか? なにをもとめて? ふとそんなアイデアが頭を擡げます。
とくにこの現状、1ヶ月以上の時間をただ部屋で過ごしていると、それらの問いはなおのことおおきく、おおきく膨らんで立ち上がってくるのでした。わたしはいまこの東京にいてなにができるのんか。『Room 203』でのわたし、20歳のぼんくらボーイは「開けはなした窓 風と木漏れ日 / feelする瞬間をただ形にしてくだけだ」とのたまっております。この部屋からのmoodを「ただ形にして」ゆくさきにいったいどんな景色があるの、と東京砂漠! 誰かが返してくれるはずはなく、アイノウ、その答えは自分でみつけるしかないのよね。……東京についてはまだまだ書きたりぬゆえ、また明日にでも続けたいと思います。
おしらせ
▶︎リリースワンマン公演@渋谷WWW 開催決定(チケット発売中)
9月28日(水)最新アルバム「When you swing the virtual ax」のリリースパーティを開催します。
詳細はこちら→https://www.macomarets.me/blog/news220809
▶︎音楽フェス『岩壁音楽祭2022』出演決定
※第1弾アーティストとして Omega Sapien、Ena Mori、CYK、ermhoi + 小林うてな、maco marets、さらさ 出演決定
詳細はこちら→https://www.gampeki.com/
▶︎最新アルバム『When you swing the virtual ax』好評配信中
詳細はこちら→https://linkco.re/psUESTav
▶︎連続配信シングル第6弾『Moondancer』好評配信中
配信はこちら→https://linkco.re/Y03ArgVb