【B.N.25】さわらのさる、浮世にはばかる（ft.『S.N.S.』）（Sandwiches / 2020.5.3）
（この記事は2020年5月3日に投稿した内容をそのまま再掲したものです）
隔日の「楽曲紹介（どんな連載かはこちらのリンクを確認されたい）」、今回は2016年リリースのデビューアルバム「Orang.Pendek」からM2『S.N.S.』です。これまた細かいのやけどYouTubeは表示が間違っていて、最後のSの後にもカンマが入るのが正しい。
この曲はmaco maretsのデビュー前に情報解禁とともに公開された、いわばリード・トラックのひとつ。リリース元であるRallye Labelもいたく気に入ってくれたようで、当時いちばん表立って告知され、再生されたのではなかろうかという楽曲です。
んでもって、たまにタイトルが『S.N.S.』とあるから「この曲はソーシャル・ネットワーキング・サービスを揶揄しておるのね」と言われることがある。ぜんたい、聴き方は自由なのでそれもひとつの印象としてありなのやけど、わたしが『S.N.S.』というタイトルをつけたのはhookのパートで連呼している通り「Sawara（さわら）No（の）Saru（さる）」……「早良の猿」が楽曲の主となるモチーフになっているから、なのでした。
待てやい「早良の猿」ってなんぞ、という方がほとんどだと思います。包み隠さずいえば「早良」は地名で、わたしが生まれ育った福岡県福岡市早良区からとったものです。そして猿というのは自分・maco marets のこと。
余談になるけれどわたしの実家はその早良のとくに山側にあり、庭や通学路にニホンザルがでることもしょっちゅうでありました。出会うにつけ、しかし自分も猿みたいなものやんなあ、という意識が芽生えておった気もします。
そもそもアルバムの「Orang.Pendek」も「オランペンデク」というUMA（未確認生物）からとっており、これはインドネシアのスマトラ島に生息すると言われる小型類人猿の名前なのです。現地のことばでは「森の小人」という意味があるそうで、東京に迷い込んだ、UMAのごとくあいまいな存在感しかもたぬおのれに思わず重ねた結果がこのタイトル。そして「早良の猿」を自称する『S.N.S.』に繋がったのであります。
まっこと、繰り返しになるけれど「上京」という経験はおそろしく不安なものであったし、当時の自分を振り返ってみれば街に迷い込んでしまったおさるさんそのものの様相やった！ 『S.N.S.』はアルバムの中でもとくに粗雑な言葉づかい、歌い口の目立つ楽曲だと（個人的には）思っておるし、それは歯を剥き出した、maco marets ピテクスなりの威嚇ポーズだったのかもしれません。「Hey People! 聴いてくれよ / さわらのさるが歌ってるんだよ」って後半のフレーズなんてもう、せつないやあね。
上京に限らずとも、おのれの生まれ育った場所から離れて生活をするっちゅうのはさまざまな負荷をしょうことになるでしょう。見知らぬ土地においては周囲の環境がおもきしブランニュー・データとしてなだれ込んでくるわけで、そりゃ意識せずともよ、慣れ親しんだホームと比べたらざらざら、不安な手触りであることは当然です。しかしてそれを解決するのは、はたして時間やろうか。
前々回、前回とお話しした通りで、上京8年目を迎えた今日も、いまだこの東京にて迷いばかりこね回しておるわたしです。とくにいまの状況ではどれだけ生まれ育った地元・福岡の暮らしが魅力的にみえていることか、正直に告解せねばなるまい。都会はどうしたって息がつまる、ナチュボン・猿なら山のなか・享楽的に暮らすが易しと、そんなアイディアはつねにポケットに入っています。ひるがえって、留まる理由も同様ですけれど……。
結局はぶるぶるふるえる子猿のままだと、認めてしまうのもなさけない。「早良の猿」の矜恃にかけて、それでも「爪たてる 冷たい街の角」で「自分が自分でいられる姿 探し続ける」のがおのれのスタンスやと、ああ！ つまりやっぱり、なにも変わってないのやった。
おしらせ
▶︎リリースワンマン公演@渋谷WWW 開催決定（チケット発売中）
9月28日（水）最新アルバム「When you swing the virtual ax」のリリースパーティを開催します。
詳細はこちら→https://www.macomarets.me/blog/news220809
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