【B.N.36】怪獣たちのおるところ(Sandwiches / 2020.5.14)

(この記事は2020年5月14日に投稿した内容をそのまま再掲したものです)

昨日はベッドの下の薄暗がり、そのちょっぴり寒気がするようなおそろしさについてお話ししました。しかして、ここで(もう何度目かわからぬが)おのれの部屋をぐるり見渡してみれば、ベッドの下どころか、机や、書棚や、テレビ台や、とかくいろんなところに怪獣がひそんでいることに気づいてしまった。やや、積本の山なんかもある意味とても怪物的なプレッシャーをまとっておるもんやけど、そうした比喩ではなく、本当に怪獣……正確にいえば、怪獣のソフトビニル人形(ソフビ)がたくさん転がっているのです。ほら、お恥ずかしながらnerdなお部屋なものですからね。

それは以前触れた『STAR WARS』のエイリアン、ジャー・ジャー・ビンクスだったり、あるいは『ゴジラ』シリーズに登場する全身刃物の凶悪な怪物・ガイガンだったり、作品もごちゃまぜな特撮怪獣たちやけど、特に多いのは『ウルトラマン』シリーズに登場する有象無象です。ピグモン、ケムラー、バニラにアボラス、ゴモラ、ダダ、レッドキング、などなど! とくに初代・ウルトラマンの怪獣をメインに取り揃えております。

「なんじゃあそれは、知らん、つまらん」なんて向きもおるでしょうが……、これがまたBeatlesや『STAR WARS』と同じように、両親、とくに父親が『ウルトラマン』と育った世代であった影響なのです。幼少期は、仕事帰りの父親がお土産に怪獣のソフビ(あるいは機関車トーマスのプラ人形)をぶらさげて帰ってくるのがなにより楽しみなイベントやった。んでそんなノスタルジーにかられてわたし、齢25となってもそうした怪獣につい、手を伸ばしてしまうときがあるわけで、わかりますよ、ちょっぴり恥ずかし後ろめたしな感情もないではないが、ただそれ以上に色褪せぬ怪獣の魔力、魅力の引力ぐいぐいぐい、たるやこりゃもう取り憑かれたもんで仕方がない。

とくにわたしの思う怪獣の魅力はその造形や設定にあり、その見目かたちについてはソフビでも存分に堪能できます。とりわけ、コストカットのしわよせを受ける以前のすこし古いソフビ(いま手元にあるものも1999年製造だったりします)が、とてもクオリティの高い印象。最近売っているものは、価格を抑えるためかサイズが小さめで、塗装も簡略化されていたりするのよね。それはそれでミニマルでかわいいけれど、やはり大ぶりでゴワっとしたソフビのほうが肌馴染みするし、なにより迫力があってイカすのです!

たとえばいまわたしのPCのすぐ脇には、あのケイン・コスギ氏が主演をつとめていた米国制作のウルトラマン作品『ウルトラマン・パワード』バージョンのバニラ、それからジャミラなんかが立っています。バニラは赤い体表を持ち、人間のような顔をしたおそろしい怪獣ですが、男性器と女性器を彷彿とさせる造形が組み込まれいたり、ジャミラについては「宇宙飛行士が怪獣化した」という設定があるため、宇宙服と人間が一体となったようなデザインになっていたり、とくに米国版ということもあるけれど、子供向け番組のキャラクターと思えぬ含蓄を感じさせてくれる。

まあ怪獣の「設定」そのものについて言えば古い作品になればなるほど適当といいますか、詳細に定められていない場合も多いようです。小学館発行の『怪獣図解入門』(初版は1972年!)という、ウルトラマンの怪獣を解説する本が手元にあるので開いてみると、あろうことか怪獣の骨格や内臓まで開いて、各部の名称が書いてある……「ベロクロつの(鉄の5千倍もかたい。)」「ベロクロ口(1億度の熱をはく。)」「ベロクロミサイルつめ(強力なミサイルを放つ。)」と、これは超獣・ベロクロンのページですが、終始がこんな調子です。とりあえず強そうに書いとこうっと! なんて、サラサラ筆を走らせる担当者のとぼけ顔が浮かぶようで、これはこれでとても面白い。

勝手な想像やけど、こうした設定を書く人間と、デザイナーとはまったく別で、とくにコンセプトの共有もされていなかったのではないか? なんて思ったりします。『ウルトラマン』を見るにあたって生物学的に緻密な設定、そのリアリティを求めるひとなんてごく少数でありましょうし、いかに子どもたちの目をきらきらさせるか、それを考えればね、「1億度の熱をはく。」なんて言ったもん勝ちの大正解でしょう。そんなおおらかさもまたすてきです。

そういえば、『怪獣図解入門』を購入した東京・高円寺のとある古書店には怪獣のソフビがたくさん置いてあって、これはまたはやいところ出かけて行って、あたらしいお仲間を連れ帰りたいとそんな心持ちになってまいりました。「人類の敵」としてデザインされた彼らであっても、わたしの部屋にあっては愉快なお仲間であり、もっと言えば消し去れぬchildishなノスタルジー、その孤城を守るための守護者たる存在なのかもしれません。(よい悪いはおいておいて、)そうだ、ベッドの下にソフビ・エリアをつくってしまってもいいなあ。


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