#46 さよなら'22(All-New Sandwiches)

朝、ゴミ出しのために外に出てみると突き抜けるように寒い。息が白かった。いっきに冬らしくなったと思う。スウェットに袢纏を羽織り、スリッポンをつっかけ早足で集積所へビニル袋を投げ込む。すぐに部屋へとUターン。しかし室内もなかなか冷たい。エアコンは電気代が、と妙な節約心が出て、小さなヒーターで机の足元だけ温める。うっすらと腕に鳥肌が立っているのを感じる。あいかわらず腰も痛い。作業用の椅子に腰掛けて、立って、腰掛けて。ぼんやりスクワットめいた挙動。

先週はブログの更新をサボってしまった。それで実家の母親から「体調でも崩したか」と連絡まで来たが、幸いなことに病気などはしておらず、いや、しかし今朝も頭痛で起きたから不調の兆しはあるかもしれないけれども、とにかく平常の範囲で生活している。サボった理由はといえば、なんとはなく、気の散ったからだった。

導入の10行ほどだけ綴った下書きを6つ、7つ用意していたのに、どれも一定の文字数に至るまで書き通すことができなかった。師走の浮き足立った空気のせいか? なにかにつけすぐ自分の外側に理由を見つけて逃げ出すのはよくない。しかしどうにも、なぜ? 正体のわからぬ誰かの指先が、ちょん、ちょん、触れてはわたしの集中を妨げる。

しかしだ、実はクリスマス〜お正月にかけてはブログや「音読部」などを含むmaco maretsとしての活動諸々をお休みと決めているので、言うなれば今日が2022年最後の「All-New Sandwiches」なんである。なんとか書き納めなければ、格好がつかない! だらだらした前置きはこの辺にして、ひとつ、年末らしく今年の総括でも書いてみようかしら。

こんなときInstagramなんかのSNSは、備忘録がわりになって便利。投稿を見直してみると、なんとなく1年間どのように過ごしていたのかわかる。あくまで「maco marets」としての365日であって、つまりそれはわたしの時間の一側面ではあるけれども、いまここではそれでじゅうぶんだろう。

2022年。上半期はなんといっても、ニューアルバム『When you swing the virtual ax』のリリースに向けたシングル&映像作品の展開が活動のすべてと言ってもいいくらい、一貫して準備の日々だった。前年の11月から『Nagi』『Yesterday』『Surf』『Spring Journal』『I wanna』『Moondancer』と立て続けにシングルを配信し、そしてそのすべての楽曲のミュージックビデオを制作するという……再三繰り返していることだけれど、レーベルや事務所のバックアップのない(人的リソースはもちろん、予算的にも)ひとり身maco maretsにとってはかなり無茶なプロジェクト。「ひとり運営でどこまでやれるのか」その可能性と限界を探る作業でもあった。

幸運なことに大きなトラブルもなく、最終的にはアルバムとして全10トラック。計8本(!)のミュージックビデオが完成した。

※MVは下記のプレイリストからまとめてご覧いただけます
https://youtube.com/playlist?list=PLZB32PXiFnkYCJ0bKmP08rRef1dAeGOQ9

これをやりとげられたのも、楽曲の制作に関わるプロデューサー、エンジニア諸氏をはじめ、映像ディレクターとその制作チーム、キャストの皆さんひとりひとりの善意と熱意をお借りしたからである。得難い縁のおかげで自らの活動が存続していることを特にこのコロナ禍では何度となく思い知らされてきたけれど、まさに今作はわたしとわたしに関わってくれるかけがえのない人々との「関わりあい」そのものが結晶したような作品だと感じる。

2020年の『Waterslide III』以降のアルバムたち、わたしは「ウォータースライド3部作」と呼び続けてきたがある意味で「コロナ禍3部作」とも呼べる作品群を持ってしてようやく、未曾有のパンデミックという状況下でいちど取り落としてしまったなにか、断ち切られてしまった自己と外界との繋がりを(完全であるかどうかはわからないが)回復できた、その実感を得られたのだった。そしてその「回復」の感は出来上がった楽曲や映像作品そのものというよりは、やはり制作のプロセスにおいて宿る種のものであったはずだ。ひとり運営とは言うが、作品自体はひとりでは一切完成しえないのである。そこには必ず、わたしではない誰かとの受け渡し。言葉の、音の、イメージの往還があった。

下半期は、そんな「受け渡し」を生身の現場で実現するべくライブ活動を再開することになった。ここに至るまでには実に2年半のブランクがあったから、喜びはもちろんながら恐怖感も大きい。ステージに立つことが、衆目に己を晒すことがどうしても怖かった。それでも名古屋、山形(愛する岩壁音楽祭)での出演を助走にして臨んだ復帰公演にして初めてのワンマンライブ、会場の渋谷WWWにはたくさんの友人・お客さんが集まってくれて、惜しみない祝福の拍手をいただいた。まさにマウンテン・トップ。生涯忘れることのない、幸せな時間だった。

あの渋谷の夜にひとつ確かな「受け渡し」の達成を見たからこそ、その後のライブ活動も自信を持って再開することができた。もちろん納得のいくパフォーマンスができるようになるまでには、まだまだかかる。ステージには毎度恐怖する。それでも大丈夫、たぶん、と思えるようになった。とにかく臆病な性質の自分にとっては大きな変化である。

そういえば初ワンマンにして、初のバンドセットを披露したのも大きなトピックだ。上京から9年以上のあいだずっとひとりでステージに立っていたから、4人のメンバーを加えて演奏したときの、あの高揚感と安心感ったらなかった! その場で音が生成されていくことの驚き、面白さ。平ぺったい表現になるが、新しい扉を開いたようだった。2023年は、ネオ・マコマレッツとしてバンドでの活動も積極的にやっていきたいと考えている……。

上半期は作品作り、下半期はライブ。maco maretsとしての活動の上で欠かせない(少なくとも今はそう思う)ふたつの軸を取り戻し、パンデミックにおいてさまざま「損なわれた」状態から再起してゆく。かんたんにまとめればそんな1年だったのではないか。

2023年に向けて、今はまた新アルバムの仕込みをはじめている。ライブの予定も決まっている。そうだ、本当は執筆の仕事ももっとやりたい。「先のことはどうなるかわからない」とうそぶきながら、それでもなにか良いことがあれば、と根拠のない期待感とともに手を動かそう。

そこにはまた、寄り添ってくれる誰かの存在がある。感謝を忘れないこと。当たり前のように聞こえるけれど、だいじなこと。

約1年間(数回の例外を除いて)毎週書き綴ってきた「All-New Sandwiches」このあまりにずぼらなブログ・シリーズを読んでくださっているみなさんにも、格別のありがとうを。どうかよいお年をお迎えください。健やかに、喜びとともに。

(次回の更新は2023年1月初旬予定となります)


おしらせ

▶︎最新アルバム『When you swing the virtual ax』配信中
詳細はこちら→https://linkco.re/psUESTav

▶︎連続配信シングル第6弾『Moondancer』配信中
配信はこちら→https://linkco.re/Y03ArgVb