【B.N.27】凡絞り、あふれる灰汁イズ電気(ft.『Leakage』)(Sandwiches / 2020.5.5)

(この記事は2020年5月5日に投稿した内容をそのまま再掲したものです)

昨日はねぼすけモーニングやったもんで反省しまして、けさはしっかり7時に起き出し・書き出しとります。「楽曲紹介」、今回は2016年リリースのデビューアルバム「Orang.Pendek」からM3『Leakage』です。これまた細かいのやけどYouTubeは表示が間違っていて、最初のLは大文字が正。

 
 

先日、『S.N.S.』を紹介する際に「『S.N.S.』はアルバムの中でもとくに粗雑な言葉づかい、歌い口の目立つ楽曲だと(個人的には)思っておる」と書きました。続くこの「Leakage」にもその傾向は強く、一見ばらばらに見えて、その通りばらばらなイメージ……しかも、わりあい具体的な、後半では色彩感覚まで指定されたかたちのものものが列挙される楽曲になっています。

ぜんたい、ひとつの楽曲、その3分前後のなかにどんなことばを敷き詰めてゆくのか。それこそわたしがゆるやかに挑み続けているフォームなわけですけれど、以前お話ししたように、バックトラックのもたらす印象や、押韻というルールや、とかくそういったさまざまな揚力をえて言葉のイメージを飛翔させておるのが常です。

その瞬間瞬間のジャンプはめまぐるしい速度で進む静止画のスライドショーで、もしそれがなめらかに、コマ撮りのアニメ映像のように再生されたとしたら(それはもっぱら受け手次第という話かもしれないけれど)、そのジャンプがおよそ限られた「安全な」範囲内におけるものであるか、あるいは突飛にみえたそれぞれの情景が、意図せぬレイヤーにおいてであっても接続されているか、まあある側面からみればほぼほぼ同義かもしれんのやけど、後者の印象なら望ましいなあと思う次第。

や、でもここまで書いていま『Leakage』の歌詞をみなおしてみたのですが、この曲に関しては「限られた「安全な」範囲内における」ジャンプしか行われていないようにも思えてきます。1バース目は、

It's ナチュラルパックしたルーティーン
遅めの朝食すませ一人 窓際のサボテンたちに水やり
そんで読みふけるフェイバリット・マガジン……

と、わざわざ「これは(わたしの)ルーティーンです」という宣言からはじまって、凡凡な「朝の情景」が連なってゆく。さらに加えて、ご丁寧にも「プロットは無しでも平凡の連続です」とのたまっておるからして、ああ、意図的な凡凡描写やったのね、と人ごとのような気づきがありました。

(ちなみに「(わたしの)」と括弧に入れたのは、必ずしもおのれの歌詞が「わたしの」ものであると考えていないからであります)

どちらかといえば抽象度を増すのは後半のパートで、「銃声はまぼろし」「裏返しのシャツが君の現し身」「濁り出すソーダの意味」「毒づくデニムのネイビー」なんて押韻が繰り出されるのですが、そこにあっても「銃声」をのぞけば(これまたご丁寧に「まぼろし」と加えておるのがいかにも真面目っぽいやなあ)「部屋」という限定的な空間における跳躍だと、そんな印象に落ち着くのでした。この囚われたmoodは、『Room 203』を紹介した際にも触れましたが、みなさま、どのように聴かれましたか。

この楽曲はそうした囚われの、限定的な範囲のことをまるでジュースミキサーのようにかき混ぜて(しかもそれなりに粗い、大きなかけらも残すようなやり方で)描きます。そこからわずかにあふれだしたもの……それこそが「Leakage(=漏電)」とのタイトルが示す通りのわずかな電流となって聴くものに届く、と、もちろん、これはあくまで実際の効果ではなく願望やけれど、きっとそんな意図がふくまれていたのかもしれません。

本「楽曲紹介」シリーズにおいては歌詞を拾ってなにか言うことをなるべく避けようと思っていたのだけど、今日は試しにやってみもうした。避ける理由は言うまでもなく、歌詞の話は結局わたしのなかに囚われた「手前の話」でオチてしまうからで、それはもっともらしい書き方はできたとしても「んなこと知るかあボケエ」とのひとことで粉砕されてしまうのだし、そうでなければな、とも考えているからで……。

明日は拙作以外の場所からひっぱって、さまざまな描写の跳躍がぜんたいとしてどんなイメージをかたちづくるのか、ぼやりぼやりとこぼしてみるつもりです。どろん!


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