【B.N.33】ジャー・ジャー・ビンクスの亡霊(ft.『Peppermint』)(Sandwiches / 2020.5.11)
(この記事は2020年5月11日に投稿した内容をそのまま再掲したものです)
さあて隔日掲載の「楽曲紹介」シリーズ、引き続き2016年リリースのデビューアルバム「Orang.Pendek」から、本日はM6『Peppermint』です。
「Step step on clumsy mind……」なんて、のっけからあやしい英語ではじまるこの曲は、ちょいとうだつのあがらない「わたし」のアティチュードをあらわしたような内容になっています。小ネタについては先日刊行の『TREEZ MAG.』に詳しいので省略するけれど、いくつかの子供っぽいイメージ、たとえば『PEANUTS』や、『STAR WARS』といった要素を含ませていたりする。上の「clumsy」というワードひとつとっても、実を言えば『STAR WARS EPISODE I / PHANTOM MENACE』(『STAR WARS』シリーズでわたしがいちばん好きな作品です)に登場するエイリアン、ジャー・ジャー・ビンクスのセリフから拾ったものなのです。
ほかにも、ドラマ『フルハウス』について触れたり、2バース目では「コカ・コーラ」、「アイスクリーム」など、なんとなくエセ 90's アメリカンな雰囲気を醸しておって、サビが怪しい英語なのも(はんぶんは)狙ったことなのでした。
しかしてあらためてよ、このアジアの小国に生まれ育ちながらあたりまえに国境を超え、さまざまなポップ・カルチャーから多大なインフルエンスを受けておってわたしたち、なんだかすごいことだ。『STAR WARS』シリーズはBru-ray/DVDで全作品揃えて今でも鑑賞しているし、劇中に登場するキャラクターのフィギアやレゴブロックは部屋のあらゆる場所に鎮座、まさに鎮座といった言い方が正しかろう、しておる。最近この「Sandwiches」でよく触れる『STRANGER THINGS』なんかもね、例に漏れずだだハマりしたものね。それらを「魅力的」と感じる中枢はいつどこでかたちづくられたんじゃいと、不思議に思ったりします。なんでわくわくするのやろうか。
いま「STRANGER THINGS: WORLDS TURNED UPSIDE DOWN」という、ドラマの製作陣によるメイキング・ブックを購入して読んでいるのですが、これがまたおかしいのです。冒頭の文章を引用します。
DO YOU copy? This book is for nerds. Repeat. This book is for nerds.
So if you're reading this right now, congratulations--you're a nerd!
(STRANGER THINGS: WORLDS TURNED UPSIDE DOWN / 2018)
おめでとう、君はナードだ! と言われりゃ、そうねうふふと微笑むほかなく、これはプラスなニュアンスのことばやと捉えますけれども、読んでいけばドラマの製作陣も『STAR WARS』や『Jurassic Park』、『JAWS』といった映画作品はもちろんのこと、劇中にも登場する『D&D』のようなゲームだったり、あるいは音楽……THE CLUSHなんかが印象的ですが、とかくありとあらゆるポップ・カルチャーの影響を受けていることがわかります。んでもってそのどれもが、日本国・福岡県の山奥で育ったぼんくらボーイたるわたしにもそりゃ素晴らしくすてきにみえるわけです。
こうした、いわゆるオタク・カルチャーの分析をするにはあまりにも知識が足りんので手を出せんけれど、これはわたしたちの親から受け継がれた感受性やのんか、どうなのか。思えば最初にわたしに『STAR WARS』を観せてくれたのはやっぱり父だったはずです。当時はVHSで、ブラウン管のテレビ上だったかもしれぬ、と、こんな回顧もエモーショナルこの上なく、そのわくわくの正体になかなかたどり着けないけれど、作品としての普遍的おもしろさは前提として、やっぱり「これがロマンだよな」ってな感覚はどこかのタイミングでインプリントされていったもののような気がします。
そう、ばちん! とスイッチを入れるがごとくの一瞬でその感受性が完成されるはずがなく、生まれてこのかた触れてきた、ありとあらゆるさまざまなカルチャー・シングがおのれのなかでミックスされ、少しずつ醸成されたものである……とそれが答えやろうか。もちろん環境や、時勢によって変わる流行からも大きな影響を受けているはずで、わたしは1995年の生まれですがみなさま、ご自身の世代はいかがでしょう?「『STAR WARS』なんてつまんない」という向きも、もしやいらっしゃるかもしれませんね。
とまれ、maco marets には消し去れぬジャー・ジャー・ビンクスの亡霊が取り付いていることはたしかで、それが楽曲にも滲み出てくるというのはぜんたい愉快でわくわくすることでしょ、そうでしょう。それともtoo ナーディックかしら。
おしらせ
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